海に千年河に千年

 さういへば、舅の紋七は、夫ではないけれども、彼女に対して、まつたく、注文が多かつた。嫁として舅に仕へるひと通りの心得はあるつもりなのだが、かた づいて来て、まだひと月もたゝぬうちから、もう、いつぱしの主婦の資格を要求した。  毎日顔を合はすわけでないのがせめてもの救ひであつた。しかし、三日にあげず、ひよつこりやつてきては、早速、小言の連発である。ふたこと目には、―― それで嫁の役がつとまるか、である。けつかう勤まります、と言つてやりたいくらゐである。  細かいことでは、掃除のこと、物の置き場所、飯のたき方、野菜のきざみ方、汁の加減、それから、気まぐれに、口紅でもつけてゐるのを見ると、もう、それ について、かれこれ言ふ。店の客の応待がことにやかましく、もつと愛嬌のある返事をしろとか、有難うございますを言ひ忘れたとか、いちいち難癖をつける。 ことに、夫に対する気の遣ひ方が足りないといふ、余計なお節介には、まつたく腹がたつくらゐで、あとでこつそりそのことを夫に告げて、ほんとにさう思ふか とたづねると、あれは親爺のくせだから気にすることはないと言はれ、やつと安心はしたものの、夫の前でも、ずけずけそれを言はれる時の切なさは、誰に訴へ やうもないのである。SEO対策 ブログ|WEB集客に繋げるSEOの基本

Ven 30 mai 2014 Aucun commentaire