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「君は、その覚悟なんですか」 「先生たちもその覚悟でおいでゝすか」 「僕達には僕達の計画があります。ぢや、君は今までの新劇俳優を標準にして、たゞ舞台に立ちさへすればいゝ、相当な役がつきさへすればいゝと云ふんではな いんですね。君は……それなら……」 「一寸お尋ねしますが、先生たちは、僕らを、まあ何年かなり教育して下すつて、その上で舞台に立たせようとおつしやるんでせう。処が、その何年か後に、僕 達が相当の俳優になるのはよろしいが、その僕等が演りたいやうな脚本を、先生たちは書いて下さる自信がおありなんですか」 「君、今少し言葉を慎み給へ。それぢや、何んですか、君は、僕たちの書くものに不満をもつてゐるんですか」 「今は不満なんかありません。たゞ、僕が相当な役者になつたら、不満が起るだらうと思ふのです」 「どうしてそんなことがわかります」 「でも、あなた方は、あなた方のお書きになるやうなものを演るのに適してゐる役者を作らうとなさるでせう。あなた方は決して、理想的な俳優が演つて見たい と思ふやうな脚本をお書きにはならないと思ひます」 「どうして」 「あなた方は、理想的な俳優といふものを御存じないからです」 「君は一体、何にしにこゝに来たのです」 「役者になりたいから来たのです」 「それなら、僕達をもつと信用したらどうです」 「僕は俳優養成者としてのあなた方を試験しに来たのです」 「といふと……」 「僕はもう帰ります。どうもお邪魔しました」日本歴史の旅
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