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まだこのほかに東京人の賞美するまぐろの類に、かじきがあり、きはだがある。また、めじという小さなのがあるが、これはその味わいもまぐろの感じよりか つおに近く、これを賞美する方も、その感じで食っているからまぐろとしての話柄から除く。さて、このきはだやかじきという奴も、東京には年中あるようなも のだが、十二月より三月ごろにかけてあるものは、おおむね台湾からやってくるので、いわゆる江戸前の美味さはない。なんといっても、きはだは八、九月ご ろ、沼津、小田原辺からくるものが江戸前である。かじきは房州銚子、東北三陸よりの入荷が一番とされている。長崎からもくる。以上のように、宮古のしびま ぐろ岸網ものを第一として、これから季節とともに、だんだんとまぐろ好きをよろこばす次第である。 まぐろの話をすると思い出すが、かつて私は大膳頭であった上野さんに、宮古のまぐろをすすめたことがある。その時、上野さんは、 「こんな美味いまぐろを未だかつて食べたことがない」 といわれた。必ずしもお世辞ばかりではなかったらしい。われわれから考えると、いやしくも宮内省の大膳頭である。およそ天下の美食という美食、最上とい う最上、知らざるものなしといった調子のものであろうと想像していたのとは、案外の言葉を聴いたのであった。それならばと、このまぐろは宮古の産であっ て、この肉はしかじかの部分だということを説明した。上野さんの頭の中には、御上のさる御一人が、まぐろを好ませ給うので、このような最上のものがあると するなら、献上してみたいという考えがあったのではないかと思ったからである。初台 歯医者
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